短歌 12/10-13
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- 二人していさ亡き父の長崎へそよ風に舞う鳥の如くに
- 啄むは浮き世の花かシベリアの風ぞ追ふらむ白鳥の冬
- 秋風や宙を廻れし黒トンビ痩せ身にまとふ言葉もなくに
- 久方の光たゆたう妹の手に我が青春の疵はありしや
- 願ふとて色即是空空即是色雲井流れて花盛り
- 天井の染みを数へて夢枕鳴きて飛びけむスズメも消えゆ
- 人はいさ祇園精舎の夢ならむ我が聞こゆるは妹の声なり
- 夫婦してなかよく暮らし陸奥のさひはての地に春をもてなす
- とつぜんに我が物思いは吐く息の白さにあらむ空に消えゆく
- 枯れ草や雪降りにけり田代岳雲井わたりて烏ぞ鳴くなむ
- 鎌倉の海や見下ろせ岩清水そは唐松の新芽吹かへる
- 筑前の海辺に来たり思へらく松に隠れし元寇防塁
- 久方の月夜を清み銀の雪降りて積もりし我が思へる君
- ビキニギャル我れも客なむさざ波や陽も落ちゆかむ男鹿半島は
- 山越えて落葉鳴らすやレンタカー猿も来るかは乳頭の湯
- 東京へ風も舞ふらむ彼岸花しばし別れむ笑ふフリして
- 東京へ風も舞ふらむ彼岸花しばし別れむ君が袖振る
- 冬の夜のともしび消してねむるときひとりの名をば闇に唱えつ
- 青春の何を苦しみ酔ひつつに六畳間にはフリージャズ鳴り
- 福岡は遠くにありて吾妹子やANAを乗り換え日は暮れかかる
- 乾杯は秋の宴ぞ長崎のオランダ坂に佇む月は
- 哀しとや揺られ揺られて福岡の妻の育った景色を見むと
- 青春の何を苦しみ酔ひつつに寝台列車はドルフィの声
- 庭先の枝を拾ひて何せむに妻を恋ふらむ初冬の風
- 白鳥の田井に宿らふ過ぎがてに見ずて聞こえしモオツァルト
- 枯れ田に雪降りしけば北秋の何を食らはめ老ひたる鳥は
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