平田オリザ 『わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何か』 講談社現代新書 2012


他人と同じ気持ちになるのではなく、話せば話すほど他者との差異がより微細にわかるようになること。それがコミュニケーションだ。【鷲田清一氏】



「対話的な精神」とは、異なる価値観を持った人と出会うことで、自分の態度が変わっていくことを潔しとする態度のことである。あるいは、できることなら、異なる価値観を持った人と出会って議論を重ねたことで、自分の考えが変わっていくことに喜びさえも見いだす態度だと言ってもいい。(p103)

コミュニケーション教育は、人格教育ではない。(p149)

私は、これからの時代に必要なもう一つのリーダーシップは、こういった弱者のコンテクストを理解する能力だろうと考えている。…自分が担当する学生たちには、論理的に喋る能力を身につけるよりも、論理的に喋れない立場の人びとの気持ちをくみ取れる人間になってもらいたいと願っている。(p183)

シンパシーからエンパシーへ。同情から共感へ。これはいま、他の分野でも切実な問題となっている。…ここで言うエンパシーとは、「わかりあえないこと」を前提に、わかりあえる部分を探っていく営みと言い換えてもいい。(p198-200)

成熟型の社会では、多様性こそが力となる。(p216)